次代のホツマ研究に向けて  今村聰夫

松本師の分身とも言える月刊『ほつま』がついに廃刊となった。六年前に大病を乗り越えた後、師は前にも増して『ほつま』出版に情熱を注がれた。奮闘される師のお姿は痛々しかったが、私たちは『ほつま』を存続させるために、出版を肩代わりすることが出来なかった。なぜなら『ほつま』は常に師の精神を象徴するモノザネだったから。誰しも、『ほつま』は師の手を離れる事があれば亡骸と化すだろうと思っていた。師も私たちも、それを望まなかった。『ほつま』は松本師の体力と運命を共にしていたのである。

今、私たちはホツマ研究の第一段というべき、一時代が終わりを告げたと感じている。それは、ヲシデ文献の新発見から今日までの四半世紀、ホツマの体系的研究では唯一の専門家として、松本師が道を切り開きつつ孤独な歩みをされた時代であった。私たちは師からホツマの素晴らしさを学び、師を行司として互いに討論し、師の評価によって自論の勝ちを判定して来たが、師を継ぐべき人物を輩出する事は出来なかった。
そして今私たちは、ホツマ研究の第二段階に進もうとしている。それは師が切り開いた道を整備すると共に、新たなる道を作るために未開の地に鍬を入れることだ。
この出発は、一からの出直しになるだろう。なぜならば、松本師のパーソナリティーという求心力を失った今、それに代わる物として、新たなる組織を作り、その中で求心力を育てていかなければならない。
幸いにして、盛岡在住の先輩である鏑氏が、会報ホツマの編集発行を引き受けて下さったので、十月十五日の赤坂研究会に代えて、岩手山麓国民休暇村での親睦会とした。参加者は十一名、翌日は田沢湖で鏑先輩と別れ、東京から駆け付けた一名を加えて、二日間にわたる出羽三山詣でを行った。
次代のホツマ研究に向けて、私たちは今スタートを切ったところである。

会報ホツマ 創刊号 巻末「キツサネ」欄より
(平成七年一月)

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